とにかく止めなくてはという打球は別として、アウトにするチャレンジをしたかどうかということは、内野手の使命としても大切なことです。
今回は内野手のレベルを1つ、2つと上げる逆シングルのメリットと方法についてご紹介します。
まずは身のこなしから
打球は一定の動きをするわけではないので、守る動きも様々なバリエーションが必要です。
基準となる流れの中では、ボールに向かって行きながらスピードの強弱はつけてアプローチをしていき、前へ、ボールへという流れになります。
ですが、そう余裕を持って処理できる打球ばかりではなく、時には強く、時には不規則なバウンドがやってきます。
そんな打球の処理に必要なのが身のこなしです。
これはボールを捕まえるための動物的な反応でで、いちいちこの時はこう動くというマニュアル的なものではなく、ある程度反射的に体を動かすということであり、普段の練習、またトレーニングの中でとっさに動けるだけの運動神経を身につけなければいけません。
「身のこなし」について、一概に臨機応変と言ってもピンと来ない人も多いかと思うので説明していきたいと思います。
ゴロ捕球には出来るだけ避けなければいけない場所があります。
ゴロの捕球体勢をとった時、両腕の間に出来る空間がそれです。
なぜそこを避けなければいけないかというと、懐までボールが入ってしまうと必然的に視界から外れてしまい、捕る、ということが予測でしかなくなってしまいます。
感覚やおおよそで捕ることになれば、確実にキャッチするということは半ば諦めなくてはなりません。
もちろん、試合では形ではなく、アウトを取らなければいけないので、打球が速くて、またバウンドが合わなくて、という場合には最後の砦としてはアリですが、それはあくまでも最終的にそうするしか方法がないという状況においての話で、技術ではない部分です。
とにかくそこへ入れないために右へ左へと体を反転させたり、片手で捕りに突っ込んだり、バウンドの中に入ってみたりします。
その中で共通することは、「足を揃えない」ということです。
足が揃ってしまうと、どうにも動かなくなってしまうのが人間の体で、次への動作につなげるには不安定になる場合があります。
「どうしよう」と迷ったら、とにかく頭を落として低くなり、足の前後をいつでも入れ替えられる準備をし、その時上半身は力を抜き、グラブは地面につけて待つくらいにしておきます。
怖がらずに頭だけはそのままで、冷静にボールを見定めて右へ反転するのか、左へ反転するのかの判断をします。
もちろん、この瞬間は考えるというよりも反射的に動かなければ遅れてしまいます。いざ捕る瞬間に出遅れないようにじっくりと冷静に待つ最初から突っ込む場合はスタート時の判断となりますが、捕る瞬間に一歩前へ出る場合は冷静な判断から生まれます。
闇雲にボールへ突っ込むのではなく、「ここだ」という一瞬の判断に委ね、つかむ、と言った方が近い感覚です。
一瞬の判断から瞬時に動くことで俊敏さが引き出され、打球の中に入るというこなし方も冷静な判断による俊敏性が必要です。
打球の中に入るとは、例えばある程度高さのあるバウンドが中途半端になり、そのまま正面に入ってしまうと飛び上がりながら懐に入れなければならないような状況です。
そんな時は身を低くして、グラブ側を上に向けるように半身になります。捕る瞬間はその半身の状態でさらに足を低くし、グラブを持たない手を地面につけて、グラブ側の体側を反るようにします。
形としてはスライディングのような状態で、ボールをやや見上げるように捕ります。
ボールの下に入ることでバウンドの高さ、速さが正面から見るよりもよく把握出来、グラブの自由が利く分、ボールを捕らえるということが可能になります。
こういったボールへの対処の仕方が身のこなしの初歩的な部分です。
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逆シングル(バックハンド)
身のこなし方と同様にグラブさばきも様々で、冷静さと臨機応変な心構えが必要です。
グラブさばきは基本的には片手で行うものを言います。
その為、正面の易しいゴロに関しては、さほどグラブさばきという技術を要せず、あくまでも緊急・応急で、臨機応変な対応をしなければならない時に使う技術のことです。
捕球は片手で行い、手首の柔らかさでグラブが自由に素早く動くことを覚えます。
感覚を掴む練習方法としては、5〜6メートルくらい離れ、両足を固定し、頭をなるべく動かさずに二人でショートバウンド、ハーフバウンドなど、ワンバウンドを投げ合うい、捕球は片手で行い、手首の柔らかさによってグラブが自由に素早く動くことを覚えます。
使ってみると意外と逆シングルの方が扱いやすく感じることもあり、逆シングルの必要性を理解することが出来ます。
この練習の延長として、ペッパーの練習方法で、打者側にはなるべくワンバウンドを打ってもらいます。
守る側は先ほどの練習と同じように足を固定し、グラブだけで打球を捕ります。
人が投げるよりもランダムで強く速いボールが飛んで来ることもあるので、少し早めに対応しなければなりません。
反射的、かつグラブが適切に出るように日課として行うと必ず違いが表れるはずです。
具体的な逆シングルの動き
逆シングルは、用途によって、腕の動き、グラブの使い方が違うため、いくつかの方法があります。
よくありがちな間違った方法の一つとして、グラブの面をボールに向け、ヒジ、グラブを真上に上げるようにして捕るというものは、ミスが多くなり、実用的ではありません。
例えば、その方法でグラブを上に上げてくる動作をしてみます。
そしてグラブを外し、閉じられた指先が離れないようにくっつける。その指を誰かに引っ張ってもらいます。
すると当然指先は離れてしまいます。
その感じを覚えておいて次に、脇を締めて、手のひらを下に向けてから指先でものをつまみ上げるようにしながら、手のひらが体の方を向くように手首を半分ほど捻ってみそしてまたその指先を離されないように頑張り、それを離そうと引っ張ってもらう。
この二つの動作ではどちらの指先の力が強いかというと、当然のことながら後者の方が強くなります。
何が違うのかというと、脇が開いているのと閉まっているのとの違いです。
人間の体は脇が開いてしまうと力が入らず、どんなスポーツでも、脇を開けることを基本とする作法はあまり存在しません。
野球も例外ではなく、バッティング、走塁、守備、脇を開けることが望ましいものは一つもなく、グラブさばきでも同じことが言え、逆シングルもまた同様の理屈です。
逆シングルの状態でヒジを上げれば脇が開きます。
脇が開けばグラブの指先には力が入らず、何より上に上げる動作は腕の自由が利きません。
そのような状態であれば、たとえ捕ってもグラブからボールがこぼれ落ちる可能性が高くなり、向かってくるボールに対して縦にグラブを使うわけですからボールとの接点が捕る瞬間のほんの一瞬でしかなくなります。
総括して言えば、グラブや腕を縦に使おうとするやり方は力が入りにくく、自由も利かないため、せっかく捕ってもボールをこぼしやすく、ボールに触れず、スルーしてしまいがちだということです。
そして何より、そのあとのスローイングにもつながりにくく、また視界の違いもあります。
目とボールの間にヒジが入ること、グラブが前に出て行けないことで捕球時がどうしても憶測になってしまい、憶測の域が多ければ多いほどミスの可能性も大きくなってしまいます。
では、先ほどの脇を締めた手の動きを逆シングルに応用してみます。ボールを捕りに行き、クロスした足に重心がかかり体勢が低くなり、向かってくる打球のラインにタイミングを計ってグラブを差し出してキャッチし、または捻る動作によその捕る瞬間の動作の中でグラブを少し捻りながら捕り、ボールをつかみに行くといった感じになります。
このつかむ感じがまた違った場面でも生きてきます。
この捻る、つかむという利点は言うまでもなく、ボールを捕った時点での力の入り方にあります。
絶対に指先が弱くなることはなく、打球のラインからグラブを外さないことでスルーしてしまう危険性もかなり低くなります。
そして脇が閉まって顔が上がっていないことがスローイングでも生かされます。目線はそのままで、腕も下がった状態ですから自由が利きます。
近くへ小さく早く投げる、遠くへ強く投げるといった状況に応じたスローイングにつなげることが難しくはなくなります。
用途や状況に応じた逆シングル(バックハンド)
捕った流れでそのままスローイングにつなげる逆シングルです。
例えばショート、サードの場合、捻るようなグラブの使い方をしている余裕がなく、捕ったらその場で踏ん張ってすぐ投げるような状況があります。
三遊間の深いところか、三遊間寄りの打球で、とにかくすぐ投げないと間に合わないような状況では、打球の勢いと送球までの動作を融合させてプレーを完成させます。
この時、足をクロスさせる場合とさせない場合があるので、まずはクロスきせた場合を説明しまま打球にアプローチし、捕球出来る距離まで来たら、捕球できる低さまで重心を落として踏ん張る。
打球のラインを見て、そのラインにグラブを差し出し、ここまでは捻るという方法とほぼ同じです。
ラインにグラブを差し出したら、今度は捻らずに打球をグラブで吸収するように後ろへ引いていく。
引くという表現に誤解が生じやすいのでもう少し細かく説明すると、打球のラインに合わせて、そのままスローイングの流れまで持って行く。この途中で実際」にボールをキャッチし、握り替えも行います。
要するに打球の勢いや球筋をスローイングまでの流れに生かし、そうすることで無駄が省かれ、しっかりとしたスローイングにもつながります。
ショート、サードはもしかしたらこの方法の方が頻度としては多いかもしれません。
スローイングの距離が長い分、体勢にかかわらず投げる意識を強く持たなければならないのです。
もちろん、セカンドでもこの方法を用いるケースがないわけではないので、ポジションにかかわらず技術の引き出しとして持っておくべきです。
もう一つ、足をクロスさせずに逆シングルからすぐに投げるという方法があります。
もちろんどのポジションでも有効ですが、特にセカンドが有効に使うべき技術です。
同じ右側の打球でも正面に入ろうと思えば入れるような打球で、目一杯で正面に入って、スナップスローで投げることは可能でも、アウトにするだけの送球が出来るかどうかという打球に関しては、少し待って打球を右足の外側辺りに合わせて逆シングルで捕る方が強い送球が出来るため、結果的には逆シングルでの送球が得策です。
逆シングルでの捕り方は、先ほどの打球のラインを利用する方法と同じで、足がクロスではなく、正対した状態だという違いだけです。
捕る時は打球が右足の外側に来ますから、上体はやや捻った形になります。打球のラインにグラブを差し出し、打球の流れを送球まで生かしながら、いざスローイングにつなげます。
スローイングでは足はそのままにして、右足側で捕っているので、体重の8、9割が右足に乗っています。
捕って投げるまでの動作の間に左足に体重を移動させ、体重移動の勢いを腕の振りに利用するのです。
待って逆シングルということに抵抗感があるかもしれませんが、これがアウトにする方法としては最も効率のいい対応です。
実際に体感してみれば送球の明らかな違いが分かります。
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正面の逆シングル(バックハンド)
正面の逆シングルで言えば、特に緩いゴロに対して有効です。
緩いゴロを捕りに前へ突っ込む場合、大抵はグラブを前に差し出すような捕球体勢になります。
この動作が特に問題だということはありません。ただ、これよりももっと早いプレーに仕上げようとするならば、例え正面でも逆シングルが有効です。
例えばグラブを下に差し出して片手で捕球する場合、捕球後、体を起こしてオーバースローに転じなければなりません。
しかも打球によってはバウンドを合わせなければならなくなり、スピードを加減しなければなりません。
要するに間一髪を争う割には意外と早くはないという場合があります。
またセカンドの場合は、緩く若干ベース寄りに来た打球に対してグラブを下にそのまま突き出すには、打球のラインを越えて捕りに行かなければならないため、わずかですが捕球までに距離が出てしまいます。
例えば、緩い打球が自分よりも右側に飛んで来ているとします。
それに対してグラブの受球面を前にして差し出して捕るには、自分自身が打球よりも右側に入らなければならず、緩い打球に対して直線的ではなく、やや後ろからふくらみを入れて捕りに行っていることになります。
しかも、低い位置で捕球したのにもかかわらず、体を起こしてオーバースローにまで持って行かなければなりません。
そんな場合にバックハンドを活用して捕りに行きます。
もう1つは正面の場合です。
まず突っ込んで行くのにバウンドを合わせる必要がなく、とにかくトップスピードのままボールに向かって行くことができ、グラブの受球面が上ではなく下を向いている分、ヒジから先を自由に使うことが出来、アグレッシブにつかみに行けます。
しかも送球の際に体を起こすことなくアンダーハンドでスナップスローが出来るため体を起こすタイムロスもなくなる。
握り替えの難易度が少々高くはなりますが、出来るならばこの方法の方が時間は短縮出来ます。
このように、右側の打球に対しても、打球ラインを越える必要がなく、ななめ右に見える打球のラインに対して直線的に突っ込んで行けます。
逆シングルになっている分、打球を越える必要もありません。
このように、ある程度のレベルになったら逆シングルの練習が必要で、使いこなすことが出来れば非常に重宝出来る技術です。