ワインドアップ投法から投げる能見 篤史選手の投球フォームは、無駄な動きがなくバランスよく順序通り体を使い、リズミカルで、美しいフォームです。
このように、理想的できれいな投球フォームは足・腰の下半身で作ったエネルギーを肩から肘、手首へと合理的に伝えることで、ボールに威力を与えてくれます。
ピッチャーとして基本的なフォームになるのは、上から力のあるボールが投げられるフォームです。
もちろん、肩の可動域や腰の回転の特性、関節や筋肉の柔軟さには個人差があるので、最初はオーソドックスに上から投げていても、あまりオーバースローにこだわらず、自分に合ったフォームを作っていくのが大切なのは言うまでもないと思います。
そこで今回は、能見 篤史選手のピッチングフォームから学ぶワインドアップのポイントについてご紹介します。
能見 篤史選手の略歴
能見 篤史選手は、社会人の大阪ガスから2005年ドラフト会議の自由獲得枠で阪神タイガースに入団し、2011年から3年連続で2桁勝利を記録するなど活躍し2012年には奪三振王のタイトルを獲得しました。
その後もコンスタントに活躍を続けながらも、2020年に球団の構想から外れ退団し、同年オフに選手兼任投手コーチとしてオリックスに移籍しました。
投球フォームは、スリークォーターのワインドアップから投げる平均球速140km/hのフォーシーム・スライダー・フォークボールを軸に、チェンジアップも交え、中でも決め球にしているフォークは、落差と高い精度を誇る球種として使われています。
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目線を見据える
ボールをグラブの中に隠して、ワインドアップではそのまま腕を頭上に上げて行きます。
この時、視線はターゲットとなるキャッチャーのミットを見据えながら、無駄な力を抜いて振りかぶっていきます。
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モーションは停止させない
ワインドアップで振りかぶり、両腕の肘が折れて頭の後ろでいったん止まっているように見えますが、投球にリズムと勢いをつける為、ふりかぶって頭上でモーションを止めないことが大切です。
モーションを止めてしまうと、またそこからの始動となってしまい、ワインドアップする意味がなくなってしまいます。
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軸足と逆の脚の使い方
プレートを踏んだ軸足は、プレート前のふちに平行になるように置き、右ピッチャーの場合、プレートの幅のうち、三塁側のふちに軸足を置くのが多く見られます。
このとき、足は決して二塁方向に傾かないように気をつけて、軸足と逆の脚は、力を抜いた状態で膝から持ち上げるイメージで上げていきます。
そして、そのまま内側にしぼるようにして軸足と逆のを持ち上げながら、重心は軸足のももの内側にかけます。
この時、軸足側の肩が下がって二塁方向にそったり、腹を突き出すように上体が一塁・三塁方向に傾むかないよう、注意しましょう。
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タメを作る
両膝を地面につき、上半身だけでボールを投げた時と、立って下半身を使って投げた時では、どちらが速いボールを投げられるかを考えれば、明らかで下半身をうまく使うことで速くて勢いのあるボールを投げることはできます。
その為、踏み出す足を上げる時には、軸足のかかとをバネとして使う感じのイメージでリズムをつくり、体の重心を軸足のももの内側にかけるようにします。
よく言われる下半身の“タメ”は、ここから生まれていきます。
腰と両肩は水平
踏み出す足を上げて体を回転する時、右ピッチャーの場合には前の右肩が下がらないようして、腰の線、両肩を結んだ線が、地面と平行になるようにします。
また、顔の前にあった両腕は、踏み出す足が上がるのと連動して下がってきますが、この時にグラブからボールが出てくるタイミングが早いと、早く踏み出してしまうので、軸足にタメがなくなってしまいます。
その為、ボールはできるだけグラブのなかに長くあったほうがいいと思います。
そして軸足に重心を保ったまま腰をホーム方向に移動させながら、軸足の腰もものつけ根・両膝を内側にしぼるイメージでタメを作っていきます。
テイクバックとハンズセパレーション
グラブから右手を素早く離すハンズセパレーションから、そのまま利き腕を後ろに引いていくテイクバックですが、その時手首と指先の力を抜き、ボールを軽く握るように注意します。
これは、肩→肘→手首→指先というように身体の大きな部分から、小さな部分へと伝わっていく為、指先の力を抜くことで、自然に手首・肩の力も抜けます。
なので、手首を含めた体全体をリラックスさせ、バランスを保ちながら、リリースにすべてのエネルギーを集中させることで、速くて勢いのあるボールを投げることができます。
ヒップファースト
お尻がホームを向くようにすることで、腰に上体が乗るようなイメージで腰を中心とした回転運動がスムーズになります。
ここでも腕の力を抜き、ボールを軽く握り、リリースにエネルギーを集中するよう備え、テイクバックする腕は、軸足のももの外側をこするようにして持っていき、手のひらとボールは地面を向くように引いてきます。
グラブを内側にしぼる
グラブをはめた腕を内側にしぼるようにすることで、打者側の肩の開きが抑えられます。
その為、腕の動きに合わせて、打者側にきている腕は空をかくようにして胸に持っていくようグラブのポケットを外側に向けるようなイメージでたたんで行きます。
そしてボールを持つ腕は、手のひらとボールが地面を向くように引いてくると、肘が高く保たれ、胸を張ることができます。
この時左右両手の親指が下を向くように意識するのも、方法の一つです。
タメと重心の移動
ステップは、前方への腰の移動とともにスタートして、着地するまで両膝を内側にしぼっておきます。
これは腰と両足の“タメ”を保つ為で、意識としてはやや内股ぎみにして踏み出した足は、軸足のかかととホームプレートを結ぶ線上に一直線に着地します。
この時、踏み出したつま先が一塁側(※右投手の場合)に開いてしまうと、ずっと保ってきた“タメ”がリリースの前にゆるんでしまう為、内側に閉じておきます。
そして、軸足の親指のつけ根に重心を踏み出した足が着地するまで、両膝は内側にしぼっておき、重心は、親指のつけ根に乗せるようにイメージすることで、力強く軸足を使えます。
かかとの延長線に着地する
踏み出した足は、実際にはかかとから着地していくと思いますが、イメージとしては親指つけ根の内側で着地するイメージで、しっかりと土をかんで体を支えます。
その際、踏み出しは軸足のかかとの延長線にあたる、ホーム方向を結んだ線上に着地するのが基本となります。
これが軸足のつま先の延長線上の場合インステップとなり、左足の膝が窮屈になる為、フォームのバランスが崩れやすくなり、逆に一塁側へ開いてしまうのも、いわゆる“ヒザが割れる”状態で“タメ”を作ることができません。
ステップの歩幅は、スパイクの6足から6足半がよく言われる歩幅の目安ですが、体格・足腰の強さや関節の柔らかさ・投法によって当然変わります。
ですがこの歩幅が広すぎると、腰の回転を使いにくく、上半身もひねりにくくなり、重心が前足に乗りにくくなるので、守備態勢への入りやすさなども考えれば、あまり広すぎないよう、自分にあった歩幅にしましょう。
肘を上げスナップをきかせる
トップの位置を作ったら、頭を動かさないよう注意します。
頭が動いてしまうことで、当然ながら軸がぶれてしまう為、リリース寸前には手首、肘、肩がちょうどLの字を描くようにします。
そしてこの時、肘が肩より下がらないようスナップをきかせ、ボールを持つ手首にしなやかにムチの先を走らせるイメージで柔らかさを保ちながら後ろに倒します。
そして、ステップしたときには踏み出す側の肩・膝・スパイクのつま先は内側に閉じておくことが必要で、開いてしまうことで、せっかくの“タメ”が分散してし舞います。
その為、下半身は我慢を強いられるためかなりの負担がかかるので、試合の終盤など疲れてくると開いてしまいやすくなります。
その為、下半身を鍛えるのは、できるだけこれを防ぐ為必要な練習になります。
強く腕を振りスピンをきかせる
リリース直前には、鋭く腰を回転させて軸足から踏み出した足へ重心を移動させ、人さし指と中指でボールにスピンをかけていきます。
その時、頭を動かさずに強く腕を振ります。
この時、ピッチャーが力を入れるのは、このリリースの瞬間だけと言ってもよく、軸足の親指内側で体を押し出すようにプレートをけると、体重がうまく乗りやすくなります。
大きなフォロースルー
肘・手首・指先の順でスナップをきかせ、腕をすばやく振り、その流れで左足に巻きつくように振り抜きます。
これがフォロースルーで、きちんと腕が振れていれば、このフォロースルーも結果的にきちんととれます。
逆にフォロースルーを意識して大きくとろうとせずに、きちんと腕が振ることができれば、フォロースルーも自然と大きくなります。
踏み出した足は柔らかく
ボールをリリースしたらアゴを引き、キャッチャーのミットを見るようにすると、ヘッドアップを防ぐことができます。
そしてボールをリリースした手は、対角線にあたる足の外側にフォロースルーしていき、ヒザは、フォロースルーがスムーズにいくように、突っ立たずに柔らかく曲げておきます。
軸足のスパイクの裏が上を向いていれば、前足にうまく体重が移動した証拠とも言えます。