スイング軌道で対策を練る配球

個人の体型やクセなどによって、スイング軌道は人によって異なりますが、それらはいくつかに分類できます。

試合中、打席に入る際、打者はどんな時でも状況判断を求められる。序盤なのか、終盤なのか出塁しなければならないのか。走者を進めるのか…。走者を還すことを求められるのか…。

それぞれの状況に応じた打撃をおこなうために、打者はねらい球を絞ったり、打席内の立ち位置を変えたりします。しかし、いくら状況に応じた打撃をしようと思っても変えられないものがそれはスイング軌道です。

今回はこのスイング軌道に応じた配球の組み立てについてご紹介します。

スイング軌道のクセ

たとえば、打席に立つ時に「ヘッドを立てて振るう…」と思ってスイングをしたとしても、その打者の身についたスイング軌道は大幅には変えられません。

打者にとってのスイングとはクセのようなものだからです。

ましてや試合中、多くて4打席前後という短い時間に、それらを修正することは不可能に近く、だからこそスイング軌道を確認することでその打者をいくつかのタイプに分類することができます。

そしてその分類をしっかりおこなうことで、それぞれに対応した攻め方もできるようなります。

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相手チームの打撃練習を観察する

打者が打席に入る前に、捕手が準備として大事な「相手チームの試合前練習を観察すること」は「捕手として必ずやらないといけない貴務」のようなものといっても大げさではありません。

草野球の場合、プロのように同じチームと何回も対戦することはありません。

対戦が重なればデータを蓄積し打者に対する傾向と対策がわかってきますが、特にトーナメントのような「一発勝負」の大会では初めて対戦するチームがほとんどで、相手チームに対するデータなどは皆無に等しい状況です。

だからこそ大切になってくるのが試合前線習の観察です。

ほとんどのチームは試合前練習時にトス打撃やフリ一打撃をおこなう。この時に打者をしっかりと観察し、スイング軌道をチェックすることで相手打者の特徴がわかってきます。

ただし、試合前の練習は時間もあまり長くないので、一度に多くのポイントを観察してもダメで、「スイング軌道」、「ステップ」、「ヘッドスピード」の3ポイントに絞ってしっかりと観察しましょう。

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3つのスイング軌道

特に「スイング軌道」を観察することで、打者のタイプを以下の3種に分類することができます。

  • ドアスイング・・・バットが身体から遠回り
  • ヘッドが下がるスイング・・・捕手寄りの肩が下がるスイング
  • コンパクトなスイング・・・インサイド・アウトと呼ばれるスイング

この3つの打者のタイプ別の特徴と、得意なボールと苦手なボールについてご説明します。

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ドアスイングのバッターの配球

ドアスイングは、バットが腕が伸びきった状態でスイングすることで、軌道が遠回りし、バットヘッドが身体から離れて大きく回るため、遠心カが加わるスイングです。

引用:高校野球ドットコム より

バットが違回りして遠心力が加わるスイング

通常よいとされるスイング軌道は、トップの位置からグリップを引き手(右打者=左手、左打者=右手)で引くようにスイングを開始します。

引き手でグリップをいてくるのでバットへッドは当然、遅れ気味に出てきます。

バットヘッドが遅れ気味に出ることにより、バットのしなりが生まれ、より鋭いスイングを生み出せるのが、理想的なスイング軌道です。

ドアスイングとは「引っ張りたい…」、「強い打球が打ちたい…」という気持ちが強くなるため、どうしても肩が早く開いてしまい、上半身と両腕の間に距離ができバットが身体から離れた状態でスイングします。

当然、バットヘッドは遠回りするので、遠心力が大きく加わりバットに当たった際のパワーは強くなります。

長距離打者やパワーヒッターによく見られる傾向です。

スイング軌道に合った場所に投球がいった場合、大ケガをする可能性が最も高いので注意が必要なスイングの軌道です。

ドアスイングの得意、苦手なボール

得意ボール:緩めの変化球はバットとボールがぶつかる

バットが遠回りして遠心力がかかるスイングで、投球とバットがぶつかった場合に長打が生まれやすくなります。

遠心力が加わるので、スイング自体にコマが鋭く回転するようなキレはありませんが、緩めの変化球にはスイング軌道がしっかりと合います。

苦手ボール:インコースはファールになるスイング軌道

緩めや、外寄りのボールはスイング軌道が合いやすくなりますが、バットが遠回りするのでインコースはストレートでも変化球でもファールになります。

またインコースのボールを無理してインフィールドに入れようとすると詰まり内野ゴロになります。

またヘッドが遠回りするので、アウトコースのストライクゾーン、ギリギリのボール(特にストレート系)には振り遅れます。

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ヘッドの下がるスイングのバッターの配球

ヘッドが下がるバッターは、下から上へのスイングで、スイング時に捕手よりの腰が下がることで、バット軌道も下から上の動きになるスイングです。

引用:野球専門・動作解析サポート BASEBALL ONE より

顔が平行に回転するのがよいスイング

通常、「よいスイング」とされるのは、下半身主導でスイングを開始することです。

下半身主導とは、ステップをしながら捕手よりの腰を、投手よりの腰と平行に鋭く回転させることで、平行に回転することができなければパワーをロスしてしまいます。

時に、捕手よりの腰が下がるとバットが下から出る「アッパバースイング」になって、ボールを確実にとらえる確率が下がります。

腰が平行に回転することで力強さと確実性の両方を生み出すことができ、また、腰が平行に回転すれば上半身もスムーズに回転し、理想に近い鋭いスイングを生み出すことができます。

ヘッドが下がる「アッパースイング」

ヘッドの下がる打者は、スイング時に両肩が平行に回転しません。

大抵は捕手よりの肩が下がり、連動してバットへッドも下がってしまいます。

原因としてはいくつかありますが、下半身主導がしっかりできずに、捕手よりの腰が下がってしまうことが多い傾向があります。

上半身もそれに連動してしまい結果的にバットのヘッドも下がり「下から上へ」バットが動くようになります。

バットヘッドの下がる打者の場合、どうしてもバットが遅れて出てくるようになりますが、バットヘッドが下がっている分、捕手よりのヒジが閉じているのでスイングが進むとともにバットのヘッドは走りやすくなります。

そのため緩めのボールが低めにくるとすくい上げることができて、長打につながることか多いので注意が必要になります。

ヘッドの下がるスイングの得意、苦手なボール

得意ボール:甘めで横系の変化球には対応できる

スイング開始時からバットのヘッドが下がりますが、その分、捕手よりのヒジはうまくたためます。

そのためスイングの始動は遅れていても、その後、鋭いスイングになっていき、高めの緩い変化球や、外よりのスライダーといった甘めのコース、横系の変化球にはしっかりと対応できるスイング軌道です。

苦手ボール:高めのボールにはどうしても確率が下がる

スイング開始がどうしても遅れてしまうので、高めの速いボールには振り遅れます。

しかもバットとボールが点のボイントでしかとらえることができません。

また、縦の変化珠も同様で、結果としてボップフライになりやすい傾向があります。

コンパクトなスイングのバッターの配球

コンパクトなスイングは、確実にミートするスイングで、構えた場所からボールに対して最短距離でバットをぶつけることで確実にミートするスイングです。

引用:高校野球ドットコム より

最短距離で確実にコンタクト

ムダな動きをできるだけ省くことで、投球に対するブレが生じにくい為、あらかじめトップに近い位置でグリップを構えておいて、できるだけ動かしません。

そこから最短距離でバットをポールにぶつけていきます。

最短距離ということはギリギリまで投球を引きつけられるということで、最後までボールをしっかり見ることができるのでミートの確実性が上がります。

コンパクトにスイングする打者は、バットを短めに持っている打者が多く、あらかじめトップで構え、最短距離でぶつけるためにパワーはそこまで伝わりませんが、確実性があるスイング軌道です。

コンパクトスイングの得意、苦手なボール

得意ボール:インコースよりの変化球には鋭く対応できる

コンパクトにスイングしたい打者は、バットを短めに持っていることが多い。また、構えたグリップ位置から最短距離でバットをボールにぶつける意識を強く持っています。

そのためインコース寄りで肩口から入ってくる変化球はバットを出しやすくなります。

これらは、肩口から入ってくるボールを両目でしっかりととらえやすく、目の高さに近いので、最短距離で確実にバットをボールにぶつけやすい為です。

加えて腰も回転しやすいので、鋭く打ち返すことができます。

苦手ボール:アウトコースはパワーが伝わりにくい

バットを短く持っている場合、外のボールはどうしても届きにくくなります。

特に、外側に逃げていくような変化球に対しては、バットが届かない場合が多く、短く持っている分だけ、遠心力によるパワーが生まれにくいスイング軌道です。

また、仮にアウトコースのボールをとらえたとしても、遠心力のパワーが加わっていないため、強く打ち返せない場合が多くなりますが、コンパクトにスイングする打者は確実性は高いのは事実です。

しかし、アウトコースを中心に強いスイングができないという弱点もあり、コンパクトにスイングする打者といえども、抑える方法がない訳ではないのだ。

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