谷繁型と古田型のキャッチングの方法

谷繁型と古田型のキャッチングの方法

キャッチャーの一番の仕事は、ピッチャーの投球を受けることで、ピッチャーが気持ち良く・投げやすい構えをとることが大事です。

そのためには捕球時にミットが動いてストライクのはずがボールになってしまったり、捕球音が鈍く、響かないようなキャッチングではピッチャーの信頼を得ることはできません。

構えるキャッチャーの後ろ姿

今回は、キャッチングの見本として代表的な谷繁元信氏の谷繁型と、古田敦也氏の古田型の2つのキャッチングの方法についてご紹介します。

谷繁元信と古田敦也の両者の違い

谷繁元信と古田敦也の両者は、年齢がさほど離れておらず平成を代表する名捕手ですが、構えやキャッチングの方法など異なります。

谷繁と古田のキャッチャーとしての構えの違い比較

ここでは、谷繁元信と古田敦也の凄さと、それについて川上憲伸氏と、藪恵壹氏がそれぞれの違いについて解説した内容と併せてご紹介します。

谷繁元信のキャッチャーとしての凄さ

現役通算27年で、歴代最多となる3021試合出場の記録を持つ谷繁元信は、横浜時代に日本一1回。そして中日に移籍してから4度のリーグ優勝、1度の日本一とそこで扇の要をがっちり守っていた谷繁の功績は大きく、落合博満が監督時代に「一番いなくなったら困る選手」と言い切るほど、捕手としての信頼を得ていました。

千葉ロッテの正捕手だった里崎智也は、谷繁の捕球技術の高さを示す一例としてミットの面を常に投手に見せたままキャッチングしている点を挙げ、「僕がナマで見た中で一番上手い」と絶賛しています。

谷繁元信の引退試合の試合前

古田敦也のキャッチャーとしての凄さ

古田敦也は、年間盗塁阻止率.644という歴代最高記録を持っているだけでなく、引退する2007年までの現役18年間で、年間盗塁阻止率リーグトップは実に10回を数えます。

また、1991年には首位打者のタイトルを獲得し、捕手としてはプロ野球史上最多の通算8回のシーズン打率3割も記録する程投打において活躍し、まさに平成を代表する名捕手でした。

このように記録だけでなく守備・打撃の両面で、それまで定説とされていた技術に対し、自身の経験に裏打ちされた独自の理論に基づく技術で実績を残すことで、現在の技術や理論の下地を作ったと言っても過言ではありません。

古田敦也の引退後のOB試合の守備

川上憲伸が感じた両者のキャッチングの違い

中日ドラゴンズで活躍した川上憲伸は、両者のキャッチングの違いについて「谷繁さんは横の動きがものすごく上手。ミットが動いていないように見えるんです。古田さんは体を使って、言葉は悪いですけど、低めの球をうまくごまかすような感じ」と球史に名を刻む名捕手2人のキャッチングの違いを解説しています。

藪恵壹が感じた両者のキャッチングの違い

阪神タイガースで活躍した藪恵壹は、両者の違いについて「古田さんが捕ると、いわゆる際どいボールが全部ストライクに見え、ストライクゾーンに入るか入らないかというギリギリのボールを捕球する瞬間に、古田さんはミットをすばやく内側に寄せてストライクに見せてしまう。審判の目を騙すわけです。これに対して、谷繁はサインを出すとミットをピタッと止め、絶対に動かしません。ピッチャーは足をついてボールを離す瞬間に、キャッチャーのミットを目視している。谷繁は、そのタイミングにあわせて『動かない的』を作り出しているのです。おかげで、コントロールのしやすさが格段に違う」と両者の違いを説明しています。

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谷繁型のキャッチング

谷繁元信氏のキャッチングは、できるだけミットを投手へ向けたまま動かさず捕球する方法です。

谷繁流のキャッチングの構え
写真:Softbol World より

ピッチャーによっては、投球時にできるだけミットを動かさないで欲しいという心理があります。

これにはキャッチャーは構えたところから、できるだけミットを動かさずにキャッチする高い技術が求められますが、このキャッチング方法で代表的なのが、プロ野球の中日ドラゴンズで活躍した谷繁元信氏のキャッチングです。

大魔神といわれた佐々木投手の落差の大きいフォークボールも確実にキャッチした技術は、まさにキャッチングのお手本ともいえ、谷繁型のキャッチングは、まさに投球を点でとらえるような捕球方法で、ミットは上下せず体の前で構えたミットをピッチャー方向の前に動かすだけで捕球します。

また、低めギリギリのボールの捕球時に、親指をグッと前に出す感覚で捕ることでストライクに見せることも可能になります。

捕球時に親指をグッと前に出す感覚を話す谷繁

谷繁型のキャッチングは、ピッチャーの投球前は片足を地面につけない姿勢で構え、投球に対してすばやく反応することも大事で、ミットを上下に動かす遊びがないので、力が入り過ぎると荒れ球に素早い対応ができないことが特徴です。

谷繁型のキャッチングの注意点

ボールに対して目線を合わせることが重要で、ミットを構える位置が体に近すぎると、投球に対してのゆとりがなくなり、ミットの前後の動きが大きくなります。

また、体に近すぎることでミットを上から見るような形になり、当然ボールに対しての目線も上からとなってしまい、これはバスポールの原因となるので注意しましょう。

谷繁型のキャッチングのコツ

肘の遊びで投球を点に合わせることが重要で、投球がミットに届くまでは動かさずに待ちます。

コースや高低のズレに対しては、構えたところから直線的に腕を伸ばして、点でボールを捕りに行くことがボイントになります。

谷繁型のキャッチングは、ミットを構えたところから前に出すことができるヒジの遊びが重要になってくる。

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古田型のキャッチング

古田敦也氏のキャッチングは、外から内に動かしてミットが流れるのを防ぐ為、一度ミットを下にさげてから捕球します。

古田流のキャッチング
写真:Reutreu Lin より

今は、多くのキャッチャーがこのスタイルで捕球している方法で、ミットを下げた時に一旦腕の力を抜いて、タイミングを合わせてボールを掴みにいき、プロ野球ではヤクルトスワローズで活躍した古田捕手のキャッチングが一流の技術とされています。

特に落ちるボールや外に曲がる変化球をキャッチするのに適しており、ミットを持つ左手が邪魔にならないようレガース部分を地面につけることで、低いボールを捕球することも可能です。

古田の構えの段階で左足を地面につける理由

また、外のコースに流れていくようなボールのキャッチングは、外側から内側にミットを動かし持っていくことでミットが流れるのを防ぎ、ギリギリのコースをストライクゾーンで捕球することができ、フレーミングに適したキャッチングの方法です。

古田の外角低めのボールのキャッチング

古田型のキャッチングの注意点

ミットの下げ過ぎは捕球ミスにつながる為、ミットを下げてから捕球するまでの動きでタイミングを合わせることに集中するあまり、ミットを下げるときに肘まで動いてしまうことに注意します。

このことで、ボールに対しての目線がブレてしまい、ミットの動きも大きくなるので捕球ミスの原因となります。

古田型のキャッチングのコツ

肘の高さを維持して目線を合わせる古田型のキャッチングでは、ピッチャーにミットを見せてから脱力し、ミットを先端方向に一旦下げ、ボールがくるタイミングにあわせてミットを上げます。

ミットは下げても、肘の高さを維持することで、ボールと目線を合わせることができ、荒れ球やイレギュラーのボールにも素早い対応が可能になります。

写真:野球超人伝 in youtube より

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