ピッチャーを育てるのはキャッチャーと言える程、キャッチャーはピッチャーの持ち球や特徴、メンタル面まで把握した上でリードすることが求められます。
それ以外にも、バッターとの相性や力関係、タイミングが合っているかどうかを観察し、バッターの特徴を把握した上で配球を組み立てます。
今回は、データや観察力を駆使してリードする5つの具体的な配球例についてご紹介します。
データのないバッターへの配球
データのないバッターへ、ストライクとボールの緩急を駆使して打ち取る配球です。
インコースの懐をつく場合は厳しいコースへ投げ、バッターの読みがわからない場合は、ストライクとボールをうまく投げ分けて凡打を誘います。
配球例
1球目 | ボールになる遅い変化球 |
2球目 | アウトコース低めのストレート |
3球目 | インコース内角ギリギリのストライク |
4球目 | アウトコース低めのボールになる変化球 |
5球目 | アウトコース低めへのストライク |
結果 | ストレートを打ち上げて内野フライ |
バッターのステップを観察するリード
初めての対戦など、データがないバッターへの対策は、まさにキャッチャーの観察力が鍵を握ります。
1球目はあえてボールから入り、相手バッターのタイミングのとり方やステップする方向をチェックし、ボールになる遅い変化球で様子を見ることも有効です。
踏み込んでくるようなバッターにはアウトコースを警戒し、逆に開いてステップするようなバッターには、外の変化球が遠く感じるはずです。
まっすぐ踏み込んでくるスクエアスタンスのバッターには、ストライクとボールの出し入れや緩急をつけて、タイミングがあっているかどうかで次のボールを決めていきます。
ストレートに対し、あきらかに遅れているようなバッターへ裏をかくつもりで変化球を投げるようなリードは必要ありません。
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強打者への配球
長打力のある強打者に、ストライクからボールの変化球で相手に打たせる配球です。
初球のストレートにタイミングを合わせているようなら、遅い変化球を外角のボールのコースに集め、ファウルを巧みに打たせてカウントを稼ぐリードが有効です。
配球例
1球目 | 高めのボールになるストレート |
2球目 | アウトコース低めのボールになる変化球 |
3球目 | アウトコース低めのボールになる変化球 |
4球目 | インコースへのボールになるストレート |
5球目 | アウトコース低めのボールになる変化球 |
結果 | ボールになる変化球をすくって浅い外野フライ |
ストライクからボールの変化球で相手に打たせる
強打者には初球から打ってくるタイプとじっくり球種を見極めて、狙い球を絞ってくるタイプがいますが、そのほとんどは前者のタイプで、チャンスになればなるほど「自分で決めたい」という気持ちでバッターボックスに入ってきます。
そのようなバッターにストライクや際どいコースへのボールは禁物です。
はっきりしたボールから入って相手の出方をうかがい、その反応をみて次の球種やコースを選択します。
速い球を待っているようなら遅い変化球でカウントを稼ぎ、広角に打ち分けてくるようなバッターなら思い切って内角をつきます。
仮にカウントで追い込むことができなくても、変化球は外のストライクからボールとなるようなコースにコントロールさせてファウルを打たせたり、打ち気のバッターに対する心理をうまく使って凡打にしとめます。
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アベレージタイプ・粘るバッターへの配球
アベレージタイプや粘るバッターの当ててくるバッターを球威で抑える配球で、速いボールでの力勝負は、当てにきているというバッターへ有効な配球です。
早いボールは遅いボールの直後に使うと効果的ですが、一発長打のあるバッターに対しては好球となってしまう為注意が必要です。
配球例
1球目 | アウトコースギリギリのストレート |
2球目 | アウトコース低めの変化球 |
3球目 | インコース内角ギリギリのストライク |
4球目 | アウトコース低めのボールになる変化球 |
5球目 | 真ん中高めの早いストレート |
結果 | 高めの釣り球に詰まって内野フライ |
当ててくるバッターには球威で抑える
打線の中でバッターにはそれぞれ役割があり、バットに当てるのがうまい巧打者や、コースギリギリの臭いボールをカットしてくる足の速い打者などは、ピッチャーにはやっかいな相手です。
1試合を一人で投げ切るようなチームのピッチャーは、できるだけ球数を減らすことがポイントなだけに、粘るバッターに対しての打ちとり方をイメージしておきたいところです。
この場合に効果的なのが、高めの速いボールを使った配球です。
コツコツ当ててくるバッターは、ストライクかボールか見極めが難しい臭いコースのボールをカットしたり、タイミングの合わない変化球はファウルで逃げてきます。
この場合、際どいコースを狙うのでなく、真ん中高めに速いボールを投げることで、相手のプランや戦術を逆手にとることができます。
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下位打線・タイミングの合っていないバッターへの配球
下位打線のバッターや、タイミングが合っていないバッターへ厳しいコースを攻めてバッターにスイングさせない配球です。
ストレートに対してのバッターのスイングやファウルの打球方向をみて、タイミングが合っているかどうか確認し、振り遅れているようならばインコースで勝負します。
配球例
1球目 | アウトコース低めへのストレート |
2球目 | アウトコース低めのボールになる変化球 |
3球目 | インコースへ力のあるストレート |
結果 | インコースに詰まって内野ゴロ |
厳しいコースを攻めてバッターにスイングさせない
打線の組み方として、一・二番は足の速いバッターが機動力を使い、クリーンナップで返すというのがオーソドックスな形です。
六番以降はやや力が落ちるバッターが並ぶものの、ピッチャーのボールにタイミングがあっているかどうかで、キャッチャーのリードは変わってきます。
基本的に長打力がなく、タイミングの合っていないバッターに対しては、ストレート中心の配球でインコースの厳しいボールで攻めますが、小柄な選手でもインコースを得意とするバッターがいるので注意します。
ストレートに遅れているバッターに対して、変化球を投げて痛打されることがありますが、これはキャッチャーのリードとして観察不足といえ、球種を織り交ぜることばかりに意識がいき、肝心のバッターのスイングを見ていないことがあるので注意しましょう。
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クリーンナップ・タイミングの合っているバッターへの配球
クリーンナップのバッターや、タイミングの合っているバッターへの初球はボールから入りバッターの狙いを探る為、初球から簡単にストライクをとりにいかないことが鉄則です。
狙っている球種を探るためにも真ん中低めのストレートで様子を見て、決め球は同様のコースでストライクからボールになる落ちる変化球が理想的です。
配球例
1球目 | 真ん中低めのボールになるストレート |
2球目 | アウトコース低めの変化球 |
3球目 | インコースへ厳しいコースへストレート |
4球目 | アウトコースへの遅い変化球 |
5球目 | 真ん中低めのボールになる落ちる変化球 |
結果 | 空振り三振 |
ボール球を使って相手を探る配球
打線の軸を担うクリーンナップには、繊細なリードで対峙しなければならず、加えて、その日でタイミングがあっているバッターに対しても同様に注意が必要です。
相手の狙い球を探るためにも、一球目は低めのボールになるストレートで様子を見ます。
バッターのタイミングのとり方や構えからどんな球種を待っているのか判断し、下位打線であっても、真後ろに飛ぶようにタイミングが合っているファウルを打っていたり、アウトとはいえ野手の正面や外野まで強い打球を放っているバッターに対しても、ボールを置きに行ってはなりません。
試合展開や点差、アウトカウントによっては下位バッターでも塁が空いていれば歩かせるくらいのイメージでリードします。
1試合をトータルで考えて配球する
ピッチャーは長いイニングを投げる時、どうしても中盤で中だるみ状況になり、球威が落ちます。
あえて序盤では緩急を使わず、その中盤に緩急を使い終盤はストレートで押し切るなど、1試合を通しての配球が必要です。
このように、1試合を通した配球の組み立ても必要な為、基本となる配球を覚えておくとより効果的です。