熱中症とは、暑い環境で発生するスポーツ障害の総称で、脱水によって体温調節機能が破綻し、時に死亡に至ることもある障害で、夏場の野球の練習や試合の際には特に注意が必要です。

また、専門的には「熱失神、熱疲労、熱けいれん、熱射熱」に分けられ、スポーツで主に問題となるのは、「熱疲労と熱射病」です。
今回は、夏場の野球で特に気をつけたい熱中症についてご紹介します。
熱中症が起こる仕組み
熱中症が起こるしくみは、暑熱下で普段より多量に流れ出る汗によって脱水し、体温調節が破綻します。
そして、体温が上昇するとともに、「脱力感、倦怠感、めまい頭痛、吐き気」などが見られ、ときに「体温上昇による循環呼吸中枢の失調」「意識障害」が見られ、場合によっては死亡率が高くなります。
その危険性を知らせるためにも、日本体育協会は熱中症予防の原則を「熱中症予防8箇条」としてまとめ、熱中症事故をなくすための呼びかけを行なっています。
>>> 日本体育協会 スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック はこちら
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熱中症の主な症状
熱中症の症状は主に以下3種類に分類されます。
病名 | 症状 |
熱痙攣 | 多量の発汗に伴い、水や電解質、特にナトリウムの喪失により起こる有痛性の筋肉痙攣。 腹痛や嘔吐がみられることもある。 |
熱疲労 | 脱水により体温上昇と脱力をきたし、意識障害は認めるが体温は熱射病ほど高くはないもの。体温調節能力は保持されており、発汗がみられる。 |
熱射病 | 意識障害、体温40℃以上、乾燥した皮膚が特徴で、うつ熱により温度中枢機能が破綻し、体温上昇による循環·呼吸中枢の失調がみられる。適切な処置がなされない場合、多臓器不全を起こし死亡することもあるので1番注意しなければいけない症状です。 |
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熱中症の予防方法
スポーツによる熱中症事故は、「暑熱下では運動しない」あるいは「水分·塩分摂取を十分にする」など、適切に予防さえすれば、理論的には防ぐことができます。
また、高温下での長時間運動で起こることが多くなりますが、急激に気温が上昇したときや直射日光とは関係のない体育館内でも起こる点、あるいは同じ条件でも、体調の悪い場合は、熱中症を起こしやすいという点も、十分に注意しましょう。
そして、熱中症が発生したら適切に対処するのは当然ですが、そもそも発生しないよう環境条件や練習内容、水分補給に十分気を配ることが最も重要です。
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熱中症の救急処置
万一の場合に備え、応急処置の有無によって予後が左右されるので、熱中症の救急処置について知っておきましょう。
熱痙攣
生理食塩水(0.9%)や、市販の塩キャンディを複数個補給すれば通常は回復します。
熱疲労
涼しい場所に運び、衣服をゆるめて寝かせ、水分を補給すれば通常は回復します。
足を高くし、手足を末梢から中心部に向けてマッサージするのも有効です。
吐き気やおう吐などで水分補給ができない場合には病院に運び、点滴を受ける必要があります。
熱射病
熱射病は、熱中症の中でも特に重篤で死の危険のある緊急事態です。
体を冷やしながら集中治療のできる病院へ一刻も早く運ぶ必要があります。
いかに早く体温を下げて意識を回復させるかが予後を左右するので、現場での処置が重要で、熱射病が疑われる場合には、直ちに冷却処置を開始しなければなりません。
冷却は、皮膚を直接冷やすより、全身に水をかけたり、濡れタオルを当てて扇ぐ方が、気化熱による熱放散を促進させるので効率がよくなります。
また、頸部、腋下(脇の下)、鼠径部(大腿部の付け根)などの大きい血管を直接冷やす方法も効果的です。
またとっさの場合、近くに十分な水が見つからない時の効果的な体の冷却法として、水筒の水、スポーツドリンク、清涼飲料水などを口に含み、患者の全身に霧状に吹きかけます。
全身にまんべんなく吹きかけることにより、汗による気化熱の冷却と同じような効果をもたらします。
これらの液体は、冷たい必要はありません。
また、熱射病では合併症に対して集中治療も必要ですので、このような冷却処置を行いながら、設備や治療スタッフが整った集中治療のできる病院に一刻も早く運ばなければなりません。
熱射病は、死の危険が差し迫った緊急疾患であることを十分認識しましょう。