野球肩・野球肘の原因と予防の方法

野球肩・野球肘の原因と予防の方法

野球は日頃の練習や、試合で負けることなど辛いことがあります。

ですが、この辛さも野球ができてこそ味わえるもので、怪我で野球ができなくては楽しさも辛さも味わうことができません。

この楽しさを存分に味わう為に、怪我をしない・怪我をしたら早く直し、この中でも治療が特に長くなる野球肘・野球肩はきちんとした予防方法を学ぶ事が大切です。

野球肘の選手

今回は、野球肩・野球肘の原因と予防の方法についてご紹介します。

投球動作は全身運動

ピッチャーの投球フォームは、さまざまです。

最も多い投げ方は腕を上から振り下ろすオーバースローですが、横から投げるサイドスロー、オーバースローとサイドスローの中間的なスリークォーターと、それぞれが違う投げ方をしています。

また、数は少ないですがアンダースローの投手もいます。

最も多いオーバースローも、細かい部分では投手一人ひとりでまったく違う投げ方をしており、投手それぞれに違う性格があるように、投球にも個性というものがあります。

ですが、どんな投球フォームであっても、1つだけ共通点があり、肩や腕で投げているボールも、実は全身を使って投げているということです。

例えばマウンドに直立の姿勢で立ち、下半身を使わずに肩と腕だけで本塁に向かってボールを投げたとします。

おそらく、どんなに強く腕を振っても、普通に投げたときのような球速は出ないはずです。ふだんは時速140km/hのストレートを投げられるピッチャーでも、100km/hにも達しないかもしれません。

このように、投球動作は肩と腕の筋肉だけではなく関節や背筋、胸の筋肉など、いろいろな筋肉を使っていることを物語っています。

現実には、肩と腕だけでボールは投げられすが、本格的な野球の投球はとうてい無理です。

つまり、投球動作は、肩や腕だけで行うのではなく、極端にいうと足のつま先から手の指先までを使った全身運動です。

投球動作とは、全身運動による体のひねりや体重移動で生まれたパワーを、最終的には指先、そして指先から離れるボールに最大限に伝える運動です。

この運動をスムーズに行ったときに、初めて回転のよいボールやスピードのあるボールを投げることができるのです。

その為には、バランスのよい投球フォームと、それに見合った柔軟でパワフルな筋肉が必要になります。

その為、正しい投球フォームを習得することが野球肘・野球肩の予防にはうってつけの方法です。

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肩や肘を痛める最大の原因は筋肉のトラブル

人間の体には約200個の骨があり、それらが関節によって結ばれています。スムーズな運動を行うためには、全身の関節がバラバラに動いたり、動きが悪かったり、間違った動きをしたりしてはいけません。

足首・膝・股・腰・肩・手首と、あらゆる部分の関節を連鎖的に動かすごとが不可欠で、関節はただの骨の組み合わせのため、関節だけで体を動かすことはできません。

そこで、関節を動かしてくれる筋肉が重要です。

全身運動の投球動作では、①パワー、②柔軟性、③バランスの3つの要素が必要です。

①パワー

筋肉のパワー、つまり、筋力がなければ、スピードのあるボールや力強いボールは投げることはできません。

もちろん、腕の振りを速くすればボールのスピードも上がりますが、腕を速く振るには、それだけの筋力が必要ですが、筋力さえあればよいのかというと、そうではありません。

いつも重いバーベルを持ち上げたり、マシンでウェイトトレーニングをしたりしているボディビルの選手は、筋肉の量もあり筋カも非常にパワフルです。

ですが、ボディビルの選手が時速150km/hのボールを投げることは、まず不可能です。

②柔軟性

速いボール、力強いボールを投げるには、筋肉の柔軟性が重要になります。

投球動作を含めたスポーツの動作は、ふだんの生活では行わないような動きをしています。

肩の場合、振りかぶってからフォロースルーをとるまで、ふだんの生活では考えられないほど肩を大きく回します。

このように、投球動作で肩を大きく回すのは、筋肉が柔軟でなければできないことです。

肩などの動かせる関節は、それぞれの構造で動かせる範囲が決まっています。

この範囲を可動域といい、筋肉が柔軟なほど、骨格上で決められている可動城を大きく使うことができます。

③バランス

力強く柔軟性のある筋肉を持っていても、その動きがバラバラではどうにもなりません。

人間の体には600以上の筋肉があり、体重の40〜50%を占めています。

筋肉は関節でつながった骨をバランスよく動かして、歩いたり走ったり、ボールを握ったり投げたりしています。

また、実際に体を動かすような場合だけでなく、立っているだけでも、筋肉がうまく働いてバランスをとり、姿勢を維持しています。

立っているだけでも、筋肉は私たち自身が気がつかないほど小さく動いています。

投球動作になると、筋肉はさらにうまくバランスをとらなければなりません。

大きく動く筋肉と小さく動く筋肉、あっちをばしたここっちを引っぱったりと、程度の強弱、動き方には違いはあるものの、全身の筋肉がバランスよく動いて、投球動作という1つの運動を行っているのです。

これらパワー・柔軟性・バランスの3つの要素がそろっていることが、スムーズな投球フォームという形になって現れてきます。

そして、これらの要素が1つでも欠けると、肩やひじに障害が起こり、野球肩・野球肘になります。

どこかの筋肉の力が不足していたり、硬くなっていたりしてじゅうぶんな動きができなければ、うまくバランスがとれず、スムーズな動きができません。

これを投球に当てはめると、指先やボールに力が伝えられなくなり、速いボールや、いわゆるキレのあるボールが投げられなくなってしまいます。

もっとも、このような状態でも、速いボールやキレのあるボールを投げられないことはありませんが、筋力が不足している部位以外の筋肉に負担をかければよいのです。

その負担のかかる部位が、投球動作の場合主に肩や肘で最も大きく、最も激しく運動します。

そこにさらに負担がかかると、肩・肘の筋肉は疲れ、疲れが限界に達すると、それが痛みという悲鳴になって現れてきます。

野球肩・野球肘の中には、その障害の形態として骨にかかわるものもありますが、その根本にあるのは、パワーや柔軟性、パランスを欠いた筋肉の問題なのです。

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ウォーミングアップ不足

野球肩・野球肘に限らず、スポーツ障害の大きな原因の1つにウォーミングアップ不足があげられます。

ウォーミングアップとは文字どおり、体温を上げるために行う準備運動です。

ウォーミングアップの目的は、心拍数を上げて筋肉中の血液量をふやし、スポーツでのパフォーマンスを発揮することにあります。

筋肉が温まることで運動にスムーズに入ることができるため、ケガの予防には欠かせません。

おそらく、ウォーミングアップの重要性は多くの人が知っていることだとは思いますが、実際には軽視されているケースが少なくありません。

たとえば草野球では、土曜日か日曜日の1週間に1度だけ集まり、練習や試合を行うケースがほとんどで、時間ぎりぎりにグラウンドにやって来て、ウォーミングアップなしにいきなり試合を始めることもしばしば見かけます。

全ての草野球チームやメンバーがこうとは限りませんが、軽い休操を行うだけだったり、いきなりグラウンドを何周もしただけで練習や試合を始めるケースもないとはいえません。

さらに特殊なケースとしては、先発投手が1度、外野を守り、またマウンドに上がるということもあります。これも1度冷えた筋肉をまた使うという点で、ウォーミングアップ不足といえます。

練習や試合はウォーミングアップから始まっている、という意識を持ち、軽いランニングやストレッチ、体操などを組み合わせ、じゅうぶんな時間をウォーミングアップにかけることが大切です。

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投球過多(オーバーユース)

投げすぎ(オーバーユース)は、野球肩・野球肘の原因のいちばん大きな原因です。

野球肩・野球肘は、元をたどっていけば筋肉のトラブルに行き当たります。

筋肉を使わなければ筋力が衰え、筋肉自体の最も減っていきますが、逆に使いすぎても、筋肉が疲労したり傷ついたりします。

そうなると当然、筋肉そのものにトラブルが発生します。

また、筋肉が動かしている関節、筋肉と関節をつないでいる腱や、関節周辺にある靭帯(骨と骨をつないでいる線維)に問題が起こります。

これが、腱鞘炎と言われ、その原因は同じ動作をくり返すオーバーユースです。

野球の場合は、繰り返し行われる投球動作がオーバーユースとなり、野球肩・野球肘が発生します。

平日は練習、土曜日·日曜日は試合といったように、休日なしで投げ続けたり、休日があっても1日の投球数が多すぎたりすれば、オーバーユースになります。

このような背景を受けて、最近では試合数を制限したり、試合日程に余裕を持たせたりするなどの対策が講じられ、リーグによっては練習での投球数の目安を示している場合もあります。

また、高校野球で甲子園に出場する投手には検診が義務づけられ、エース級の投手を何人も用意して継投策をとるチームも増えつつありますが、チーム数の多い地域の予選などは、エースは連投を強いられることも少なくありません。

いくらパワフルで柔軟な筋肉を持待ち、それをバランスよく使ったとしても、どこかに限界はあります。

筋力や柔軟性の違いは限界の違いというだけで、それを超えて使いすぎると、結果的には野球肩・野球肘などの障害を引き起こします。

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クーリングダウン不足

クーリングダウンとは、スポーツなど激しい運動のあとに軽い運動を行うことで、体の諸器官を沈静させる目的で行う整理運動です。

スポーツ中は、ボンプの働きをする心臓が激しく働き、血管を広うながげて血流を促し、筋肉に多くの酸素を送っています。

また、筋肉を動かすことで筋肉もポンプの役割をにない、心臓の働きを助けています。

つまり、運動中は、心臓と筋肉という2つのボンプが働いています。

ですが、この状態で急に運動をやめると、筋肉がポンプの役割を果たせなくなります。

すると、心臓というボンプだけでは血液を全身に回しきれなくなって、血流が悪くなります。

運動をすると、血液の中に乳酸や二酸化炭素といった疲れの元になる疲労物質が発生し、血流が悪くなると、筋肉の中に血液が残り、同時に血液中に発生した疲労物質が残ります。

すると、体に疲れを覚えるばかりか、筋肉が硬くなったり痛みや炎症を起こしたりするようになります。

激しいスポーツのあとに軽い運動を続けると、心臓と筋肉という2つのボンプが働き続けることになり、普段の生活話で必要な程度まで、2つのポンプの働きを徐々に弱めてゆき、その間に疲労物質を取り除こうというのがクーリングダウンです。

激しい運動をする前に行うウォーミングアップは、「準備」という意味でケガの予防になりますが、クーリングダウンは「鎮静」という意味でケガの予防に効果的です。

また、クーリングダウンは身体的な鎮静だけでなく、精神的なリラックスにもつながります。

その為、ウォーミングアップと激しい運動、クーリングダウンは、3つで1組と考える必要がありますが、現実的には、ウォーミングアップへの意識が高い場合でも、クーリングダウンについての意識は、残念ながら低いといわざるを得ません。

ウォーミングアップ不足の結果は、その後の激しい運動のさいにすぐに現れますが、クーリングダウン不足の結果は、すぐには現れません。

しかし、クーリングダウン不足の結果は、次に運動をするさいになって、疲労の蓄積や障害の発生といった形となって現れます。

その意味で、クーリングダウン不足はウォーミングアップ不足以上に、体に対する悪影響が大きいとも言えます。

「疲れている」「早く家に帰りたい」「時間がない」など、クーリングダウンを軽視する理由はいくつもありますが、その疲れを取り除き、ケがを予防するためにも、アイシングやストレッチ、軽い体操、軽いランニングなども必ず行いましょう。

痛みを誘発するトレーニング法

トレーニングは、パフォーマンスの向上とケガの予防のために行います。

パワフル、かつ柔軟性に富んだ筋肉をバランスよく鍛えることが、トレーニングの目的ですが、例外的にケガのリハビリのためにトレーニングを行うことがあります。

これは、ケガをした筋肉をトレーニングによって元の状態に戻すためのもので、ケガというマイナスの状態から正常な状態にするという意識で行います。

たとえトレーニングの内容が同じであっても、ゼロにするという意識が目的ですが、この点を勘違いしているケースが少なくありません。

痛みを感じて初めて筋力不足に気がつき、そこでトレーニングを始める、というケースで、痛みのある部位のトレーニングを行っても、痛みはなくならないばかりか、かえって痛みを強くしてしまいます。

痛みがある場合は絶対にトレーニングをしてはいけない、というわけではありません。

むしろ、痛まない部位のトレーニングは行う必要があります。

肩を例にとっても、肩にはいくつもの筋肉があり、それぞれが違う動きをしています。

違和感や痛みを覚えたら、まずは医療機関にかかって、その原因と痛む部位を明らかにし、そのうえでトレーニング方法のアドバイスを受ける必要があります。

また、よくある勘違いの1つに、「遠投ができれば投球はできる」というものがあります。

投球は最終的な目標ですが、その前に投球ができるかどうかを判断する事が必要で、その際によく行われているのが、キャッチボールなどで徐々にボールを投げる距離を長くしていく方法です。

ですが、これは投球ができるかどうかという遠投は投球再開の目安にはならないかの判断材料としても、練習法としても間違いといえます。山なりのボールをいくら遠くに投げられても、投球はできません。

力強いボールで投球ができるかどうかの目安になります。

その為、ケガからの復帰のさいなどには、まずは短い距離で投げ始め、徐々に力強いボールを投げるようにします。そして、同じ強さのボールが投げられる距離を、徐々に長くしていき、最終的にマウンドと本塁の距離で投げるようにし、遠投は、マワンドから本塁までの距離で力強いボールが投げられるようになってから行いましょう。

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