「究極の目標は1人1球の27球で試合を終わらせること」という風に考えるピッチャーもいます。
しかし、現実には不可能です。
試合中は常に流れがあり、完壁に抑えることができたと思えば、ピンチが突然やってきます。
そういう「流れ」の中で投手は打者を1人ずつ打ち取り、27個(9回の場合。7回なら21個)のアウトを積み重ね、結果失点をできるだけ減らすことで勝利をつかみとることができます。
ダブルプレーやトリプルブレーなどを除して、一度に2個や3個のアウトをとることはできない為、打席内にいる打者一人一人に集中することが必要になります。
それだけ投手というのは肉体的にも精神的にもタフなボジションで、一人一人打者を打ちとるためには、それぞれの打者に対応した攻め方をする必要があります。
今回は打者の弱点を突く、打者優先の配球についてご紹介します。
打者を攻める配球
打者を攻める配球には、大きく分けて2つの方法があります。
打席内で、打者は自分自身のスイングをしたい。自分のスイングができればばしっかりとボールを打ち返す可能性が高くなるからだ。
この事と逆に、配球を組み立てる際には打者が自分のスイングができないようにすればいい考え方です。
その為には、
①打者のウィークポイントを徹底して攻める。
②打者がねらっているコースに投げない。
この2つのどちらかができれば、打者は自分のスイングができず、結果的に打ちとる確率は高くなります。
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打者を確認して配球することの重要性
「打者優先の配球」とは打者の弱点を突くことです。
弱点を突くことで、打者に自分自身のスイングをさせないようにします。
その為には、打者を徹底的に観察することが重要になります。
打席内はもちろん、試合前練習やネクストサークルでのスイングを観察する必要があ利、打席内での立ち位置、ステップ、タイミングのとり方、スイング軌道など、ちょっとした動きを見るのは最も重要である。
しかし、それだけでは不十分で、試合前練習でのトス打撃やティー打撃、そしてネクストサークルで何気なくおこなっている素振りや、そういったものすべてをしっかりと観察することで、打者の弱点やねらいがわかってきます。
打者のスイングを見て何気ない素振りから弱点を見つける
打者のスイング軌道を見ることで、その打者が得意なコースや苦手なコースがわかります。
特にスイング軌道がわかりやすいのは、試合前練習でのトス打撃、そしてネクストサークルで何気なく振っているスイングです。
投球に合わせるようにスイングしている時ではなく、何気なく振っているスイング軌道が、その打者の得意なコースである場合が無意識の為多くなります。
まず配球で大事にしたいのは、何気なくスイングしているそのコースに投げないことです。
加えて、何気なく振っているスイングの軌道からその打者が苦手なコースもわかってきます。
たとえば、バットヘッドが大回りするのか、下がるのか…。
そういった打者のクセをつかむことで、苦手なコースを攻める配球ができるようになります。
打席内での打者の動きから狙い球を確認する
打席内では1球ごとに打者の動きを確認することが大事で、打者のちょっとした動きやしぐさから何の球種、コースを待っているのかを確認したいところです。
たとえば、変化球が甘く入ってもほとんどバットが動かない打者の場合、ストレートだけをねらっている場合が多く、そういう打者に対してストレートを投げる時には細心の注意が必要になります。
「ボールになってもいい」という考えで厳しいコースに投げることが重要になります。
一方、ストレートを待っている打者に対して「ストライクゾーンで打ちとってやろう」と思って投げると、打たれる確率が高くなります。
特にストレートだけをねらっている打者は、コースではなくストレートのタイミングだけに合わせている場合が多く、はっきりと意思を持って投げないと大ケガにもつながりかねないので注意が必要です。
打者一人一人の特徴に合わせて配球する
一人一人の見た目や性格に個性があるように、打撃フォームにも十人十色の特色があります。
打者中心の配味をする際には、それらに注意して観察しておきたいところです。
打席の立ち位置、ステップが開くのか、踏み込むのか…。
相手打線の9人に対して、それぞれの打撃フォームにどういう個性があるのかをしっかりと確認し、加えて体型や使っているバットにも注意が必要です。
身体が決して大きくなくても長いバットを使用していればアウトコースに届くことがあります。
このように、観察、確認を怠ったことで不測の事態を招くようなことだけはあってはならない事象で、打者一人一人の特徴を細かい部分までしっかりと観察して、配球を決めることが重要になります。
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自分が打者の時に嫌なことを考える
「打者優先の配味」をおこなう際に考えたいのは「自分が打者としてバッターボックスに入った時に何をされたら嫌なのか?」ということです。
自分自身のウィークポイントが相手に知られて、そこを徹底して突かれることほど嫌なことはありません。
加えて「自分の弱点を知られている…」と考え、自分自身の技術に対しても疑心暗鬼になってしまいます。
そういうメンタルで打席に立っても、打てる確率が高くなるとは決して言えず、また、狙い球と異なる球種がきた場合は、よほど技術の高い打者でない限り、しっかり反応して打ち返すことはかなり難しい作業になります。
打者をしっかり観察して弱点やねらいを知る。その時点でバッテリーが打者より優位に立つことができ、打ちとる可能性が高まるのがこの打者優先の配球になります。