野村克也氏は、選手として三冠王を達成し監督としても平成期間の最多勝利記録1,053勝を保持し、南海・ヤクルト・阪神・楽天のプロ野球の監督を歴任した名監督です。
その現役時代には、自身の打撃成績の向上のためスコアの研究を重ねる過程で、スコアの研究をリードに生かすことで効率よく打者を抑えることを研究するようになっていき、監督として標榜したID野球を確立しました。
今回は、野村克也氏の全てのバッターに通用する球と配球への活用についてご紹介します。
全てのバッターに通用する球
野村克也氏の言う全てのバッターに通用する球とは、ヒットが生まれにくいとされるアウトローと呼ばれる外角低めのコースへのボールで、このボールはバッターから一番遠く手を出しづらいコースです。
また、このコースをゴロゾーンと野村克也氏は呼んでいます。
ボール1:ストライク1のカウントなど、バッターが追い込まれていない状況でこのコースへ真ん中から外角で変化するボールを投げることで、バッターはひっかけてショートゴロになることが多くなります。
このゴロゾーンへいつでも狙ってストレートを投げれるということが、プロのピッチャーの基本だといいます。
バッテリーが配球で困った時には、多くのバッターに対してこの“アウトローの真っ直ぐ”に立ち戻ることで、1塁走者がいてダブルプレーが欲しい時にこのコースへコントロールされたボールを投げることで、意図通りのゴロで打ち取る配球が可能になります。
このように、アウトローへのコースへのボールが、全てのバッターに通用する球として野村 克也氏が勧める理由です。
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アウトローのコースを使った配球の場面
楽天がパ・リーグ優勝を決めた2013年9月26日の西武戦で4-3と楽天1点リードで迎えた9回の田中将大投手のピッチングが象徴的です。
西武先頭の鬼崎選手に内野安打、ヘルマン選手に四球を与えその後の片岡選手の犠打で1死二三塁とされ、クリーンアップを迎える絶体絶命のピンチに立たされましたが、続く栗山選手と浅村選手を三振にとった場面です。
田中将大投手の栗山選手への配球
初球、外角低めに150kmを超えるストレートを投げ、NHKの中継の解説者の与田剛さんも「ほーっ」と声をあげました。
その後、2球目と3球目も同じコースにストレートを投げ、栗山選手はいずれも見逃して三振に打ち取った配球です。
1球目 | アウトコース低めのストレート |
2球目 | アウトコース低めのストレート |
3球目 | アウトコース低めのストレート |
結果 | 見逃し三振 |
田中将大投手の浅村選手への配球
浅村選手への初球は外角やや高めにストレートを投げ、浅村選手は待ってましたとばかりに振り回したが当たらず、2球目は外の低めに外れるボール。
そして3球目のストレートは真ん中高目のストレートで見送りストライクをとり、4球目が外に外れてカウント2-2からの5球目は、外角低めに滑るように走ってきたストレートを空振りし、栗山選手とともに1球もバットに当たることなく三振に切ってとった場面です。
1球目 | アウトコース高めのストレート |
2球目 | アウトコース低めのストレートでボール |
3球目 | 真ん中高めのストレート |
4球目 | アウトコースへのストレートでボール |
5球目 | アウトコース低めのストレート |
結果 | 空振り三振 |
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野村克也氏の松井秀喜を打ち取る配球
松井秀喜選手のような慎重なタイプの強打者は、カウントを2ストライクと追い込むことで三振しないよう色々なボールへの対応力を優先させてくる為、危険です。
その為、3球目か4球目のボールで凡打に打ち取る目的で、配球を組み立てることが野村克也氏の極意になります。
1球目 | バッターの懐へストレートでボール |
2球目 | インコース低めの遅いシンカー |
3球目 | アウトコース低めの速いシンカーでボール |
4球目 | アウトコース低めの遅いシンカー |
結果 | 内野ゴロでアウト |
松井秀喜選手のような慎重なタイプの強打者にはまず、初球は当たっても構わないぐらいの気持ちで、バッターの懐にストレートを投げます。
2球目は、1球目の懐へのストレートが効いている内に、ストライクゾーンギリギリの低めのコースへ遅くて落ちるボールを投げ、ファールか見逃しでストライクをとります。
そして3球目はアウトコース低めの速いシンカーで凡打を誘い、この球を見逃した場合は分が悪くなりますが、次のボールもこのコースへ遅いボールを投げ凡打に打ち取ります。